食品ロスは、どこからを数えているのか
食品ロスについて語るとき、私たちは「どれだけの食品が捨てられたか」という量に目を向けがちです。しかし、その数字だけでは、食品が生産者から消費者へ届くまでのどの段階で、何が起きているのかは分かりません。
同じ食品でも、生産者が消費者へ直接販売する場合と、複数の事業者を経由する場合では、必要な作業も費用も変わります。販売前の選別、保管、輸送、包装、陳列などが増えれば、食品そのものの移動だけでなく、売り場に並ぶまでの条件も複雑になります。
食品ロス統計が最終的な廃棄量を示していても、その背景にある流通経路まで同時に示すとは限りません。したがって、数字が小さくなったからといって、食品が無駄なく生産・販売されたと直ちに判断することはできないのです。
価格の内訳から見える「見えにくい仕事」
食品ロスを考える際、価格統計も手がかりになります。食品の価格には、原材料の価値だけでなく、販売に必要なさまざまな経費が含まれています。
| 販売の形 | 生産者の受取価格 | 販売経費 |
| 青果物を生産者が消費者へ直接販売 | 販売価格の71.8%(202204-202303年調査) | 販売価格の28.2%(202204-202303年調査) |
青果物を生産者が消費者へ直接販売するケースでは、202204-202303年調査で、生産者の受取価格が販売価格の71.8%、販売経費が28.2%でした。ここでいう販売経費は、単なる「余分な支出」とは限りません。消費者に届く状態へ整え、販売の場をつくり、取引を成立させるための費用でもあります。
この内訳から分かるのは、食品の価値が生産段階だけで決まるわけではないということです。同時に、流通や販売にかかる仕事が、食品ロス統計では十分に姿を現さない可能性もあります。どの段階で食品が売り物として扱われなくなったのか、また、その食品が別の用途へ回ったのか、廃棄されたのかによって、問題の性質は異なります。
事業所数だけでは、廃棄の規模は分からない
加工や保存に関わる統計も、食品ロスを読むうえで注意が必要です。水産加工業経営実態調査では、202204-202303年調査において、水産冷凍食品を主とする事業所は92事業所、その他加工食品を主とする事業所は224事業所でした。
しかし、事業所の数は、そのまま食品ロスの量を示すものではありません。事業所ごとの生産規模、扱う食品の種類、保存方法、販売先が違えば、発生する廃棄や再利用の形も変わります。
つまり、「どの分野に何事業所あるか」という情報と、「どれだけ食品が廃棄されたか」という情報は、別々の問いに答える統計です。両者を結びつけるには、食品の流れ、扱った量、廃棄・再利用の内訳を同じ視野で確認する必要があります。
統計の数字を比較するときの三つの確認
食品ロスの数字を読むときは、少なくとも次の点を確認したいところです。
- 何を対象にしているか。家庭、販売現場、加工現場などで範囲は違う。
- どの段階を数えているか。生産、流通、販売、消費の境目をまたぐと解釈が変わる。
- 量以外の情報があるか。価格、事業所の種類、販売経費などを組み合わせると背景が見えやすい。
食品ロス統計の役割は、単に廃棄量の多さを競うことではありません。どこで食品が価値を失ったと扱われ、どこで費用や作業が発生し、どの情報が統計から抜け落ちているのかを考えることにあります。
数字を減らすことは重要ですが、数字の境目を理解しなければ、対策の対象も曖昧になります。食品ロスを正しく読む第一歩は、「捨てられた量」だけでなく、その量が生まれるまでの食品の経路を確かめることです。
出典
- 食品流通段階別価格形成調査(農林水産省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002111374
- 水産加工業経営実態調査(水産庁)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002066269
- 水産加工業経営実態調査(水産庁)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0002066277