食料と農業の世界統計
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食は「金額」で数えるか「重さ」で数えるか――食料統計の物差しを並べてみる

食料と農業について、世界の統計を定点観測する

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同じ「食」でも、数え方は一つではない

食料と農業をめぐる統計には、少なくとも三つの異なる物差しが混在している。金額で数えるもの、重さ(数量)で数えるもの、そして事業所や人といった「単位の個数」で数えるものだ。どれも同じ食の流れを見ているはずなのに、出てくる数字はまったく別の顔をしている。この違いを意識しないまま数字を並べると、比べてはいけないものを比べてしまう。

日本の統計を例に取ると、産業連関表の系統では2015年の飲食料の最終消費額合計が8384610億円と記録されている(202001-202012調査)。一方、農業・食料関連産業の経済計算では2011年の食品製造業の国内生産額が33708.110億円とされる(202001-202012調査)。どちらも「円」で表されているが、前者は最終的に消費される段階の金額、後者は製造という一工程の産出額であり、対象範囲も年次も違う。並べて引き算をしたくなるが、それは統計の設計上、意味を持たない操作になりうる。

重さで数える系統は、別の物語を語る

食料需給表の系統は金額ではなく数量で世界を描く。同じ調査群(202104-202203調査)からは、1976年度の飼料需要量Aが21402TDN千トン、1971年度のハム生産量が1241,000トンという記録が取り出せる。いずれも1970年代の各年度についての値であり、現在の水準を示すものではない点に注意がいる。飼料の数量は栄養価に換算した単位(TDN)で示され、ハムは重量そのままだ。つまり「重さ」の系統の内部でさえ、単位の定義は一様ではない。

物差し例となる数値対象年調査時期
金額(最終消費)飲食料の最終消費額合計 8384610億円2015年202001-202012
金額(生産段階)食品製造業の国内生産額 33708.110億円2011年202001-202012
数量(栄養換算)飼料需要量A 21402TDN千トン1976年度202104-202203
数量(重量)ハム生産量 1241,000トン1971年度202104-202203
単位の個数卸小売業の事業所数・従業者数の表集計年次は表による198607 ほか

「事業所」という第三の物差し

三つめの系統は、金額でも重さでもなく、数える対象そのものを単位にする。事業所統計の系統には、経営組織・産業分類・従業者規模・業態といった軸で卸小売業の事業所数や従業者数、常雇数を集計した表が並ぶ(198607、199404など)。ここでは食が「いくらか」でも「何トンか」でもなく、「いくつの店があり、何人が働いているか」として現れる。さらに存続事業所の産業分類の変動を追う表もあり、店が業種を変えていく動きまで捉えようとしている。

この系統の表題には「飲食店を除く」といった但し書きが付くことが多い。除外の範囲が表ごとに違えば、同じ「小売」という言葉でも中身は変わる。合計値だけを見て国際比較に使うと、この但し書きが落ちてしまう。

読者が確認すべき三点

第一に、単位。円かトンか事業所数か。第二に、範囲。最終消費なのか一工程なのか、除外されている業種はあるか。第三に、年次と調査時期の区別。上の表でも「対象年」と「調査時期」は別列にした。2015年の数字が202001-202012調査から出ていることや、1971年度・1976年度の数量が202104-202203調査に収められていることが示すように、いつのことを測ったかと、いつ公表・整理されたかは一致しない。

食料と農業の議論では、しばしば一つの大きな数字が結論の代わりに使われる。だが、ここで並べた五つの数値を見るだけでも、単位の取り方、対象範囲の切り方、対象年と調査時期のずれといった設計の違いが表ごとにある。数字を引くときは、その表がどの設計に立っているかを確かめてからにしたい。

出典