人数の前に、統計の境界を見る
農業の担い手を考えるとき、まず目に入るのは人数である。しかし、農業就業人口という言葉だけでは、農業をどのような形で支えている人々なのかまでは分からない。統計には、農業に従事する人全体を捉えるものがある一方で、農業を主な仕事としている人に焦点を当てた区分もあるからだ。
農業構造動態調査によると、2017年の農業就業人口は男女計で1752.5千人だった。この中には、農業を主な仕事とする層だけでなく、農業以外の仕事との関わり方によって分類される人々も含まれている。同じ2017年の内訳では、主業農家の農業就業人口は629.1千人、準主業農家は218.5千人だった。
この数字から重要なのは、農業就業人口全体と、農業を中心に働く人々の人数は別のものだという点である。農業を支える労働は、専業的な働き方だけで成り立っているとは限らない。農業を主な仕事とする人、別の仕事と組み合わせる人、家族の中で農作業を担う人など、異なる関わり方が一つの生産現場に重なっている。
| 統計上の区分 | 人数 | 時期 |
| 農業就業人口(男女計) | 1752.5千人 | 2017年 |
| うち主業農家 | 629.1千人 | 2017年 |
| うち準主業農家 | 218.5千人 | 2017年 |
| 基幹的農業従事者数(合計) | 1753764人 | 2015年 |
「就業人口」と「基幹的農業従事者」
別の統計である農林業センサスでは、2015年の基幹的農業従事者数は合計で1753764人だった。農業就業人口と基幹的農業従事者数は、どちらも農業の働き手を知る手がかりになるが、調査の枠組みや分類が異なる。そのため、異なる調査の数字を単純に並べ、増減だけを判断することには注意が必要だ。
ここで大切なのは、統計の数字が現場の一つの姿を切り取ったものだということである。農業就業人口は、農業に従事する人の広がりを考える際に役立つ。一方、主業農家や準主業農家の区分は、農業がその人の仕事の中でどの程度中心に位置づけられているかを見る手がかりになる。基幹的農業従事者数は、農業生産を継続的に担う人々を捉える別の視点を提供する。
「人数が多いか」から「役割がどう分かれているか」へ
日本の読者が農業の現在地を知るうえで、農業就業人口の数字は出発点にすぎない。1752.5千人という2017年の農業就業人口だけを見ていると、農業の担い手が一つのまとまりとして存在しているように見える。しかし、主業農家629.1千人、準主業農家218.5千人という内訳を見ると、農業との関わり方には幅があることが分かる。
この幅は、農業政策や地域の生産体制を考える際にも重要になる。農業を主な仕事とする人に必要な支援と、別の仕事と農業を組み合わせる人に必要な環境は、必ずしも同じではない。また、統計上の人数に含まれる人が、同じ時間や頻度で農作業を担っているとも限らない。
したがって、農業就業人口を読むときは、単純な多寡よりも、どの調査が、どのような農業との関わりを数えているのかを確認する必要がある。農業の担い手をめぐる議論は、「何人いるか」だけでなく、「誰が農業を中心に担い、誰が別の仕事と組み合わせ、どの範囲までを一つの統計が捉えているのか」という問いから始まる。
出典
- 農業構造動態調査(農林水産省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003236977
- 農林業センサス(農林水産省)
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003195054