食料と農業の世界統計
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「食べられる量」と「栄養状態」は同じではない――飢餓指標を読み解く

食料と農業について、世界の統計を定点観測する

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飢餓を測る統計は、何を示しているのか

「Prevalence of undernourishment」は、ある集団のうち、通常の活動的で健康な生活を維持するために必要な食事エネルギーを、習慣的に十分得られていない人々の割合を推計する指標です。食料が足りているかを、主としてカロリーの面から捉えます。

この指標から分かるのは、社会全体で食事エネルギーが不足している人がどの程度いると見積もられているか、ということです。個々の誰が該当するのかを特定する調査ではありません。また、食料の供給、人口構成、世帯の食料消費に関する情報などを組み合わせた統計的な推計であり、食事の内容を一人ひとり直接測定した結果でもありません。

カロリー不足と栄養不足は別の問題

この指標の重要な特徴は、食事の質や多様性を直接評価しない点にあります。必要なエネルギーを得ていると推計されても、ビタミンやミネラルなどの微量栄養素が不足している可能性は残ります。反対に、栄養状態に課題がある人が、すべてこの指標の対象になるとは限りません。

したがって、飢餓の割合が低いことを、その社会の人々が十分に栄養を取れていることと同一視するのは危険です。食料の量を示す指標と、食事の質、身体の発育、健康状態を示す指標は、役割が異なります。

統計の見方主に分かること読むときの注意
undernourishment習慣的な食事エネルギーの不足食事の質や微量栄養素は直接示さない
日々のカロリー供給との比較社会全体の食料エネルギー供給と不足割合の関係平均値は個人間の偏りを隠すことがある
子どもの発育阻害との比較食料エネルギー不足と発育上の課題の関係発育には感染症、衛生、保健、生活環境なども関わる
長期的な途上国系列長い期間の変化を概観する材料定義や推計方法、更新状況を確認する必要がある

平均的な供給量だけでは見えないこと

日々のカロリー供給との関係を示す資料は、食料が社会全体にどの程度供給されているかと、undernourishment の割合を並べて考える手がかりになります。しかし、供給量はあくまで集団全体の平均です。国内で食料が十分に流通していても、所得、居住地、年齢、世帯構成などによって、実際に食べられる量には差が生じます。

このため、供給量が多い社会でも、すべての人が安定して食事を得ているとは限りません。逆に、供給量が少ないという結果だけから、各家庭の状況を一様に判断することもできません。平均と分配を分けて読むことが、統計の基本になります。

子どもの発育との比較で分かること

子どもの発育阻害との比較は、エネルギー不足の推計と、子どもの身体的な発育に関する指標がどのように重なるかを見るための資料です。ただし、両者は測っている対象が違います。undernourishment は集団の食事エネルギーの不足を扱う一方、発育阻害は子どもの身体の状態に関する指標です。

子どもの発育には、食事だけでなく、感染症、衛生状態、母子保健、養育環境など複数の要因が影響します。そのため、二つの指標が同じ動きをしない場合でも、どちらかが誤りだとは言えません。異なる統計を組み合わせることで、食料問題を単一の原因に還元せずに捉えられます。

長期系列を使うときの注意

途上国を対象にした長期系列は、長い期間の傾向を考える材料になります。ただし、掲載された系列では、対象国の区分が一定に保たれている一方、推計方法が現在のものとは異なり、更新されていないと説明されています。古い時期の値には、慎重な解釈が必要です。

国や地域を比較するときは、同じ指標名だけでなく、対象範囲、推計方法、データの期間、更新時点を確認しなければなりません。世界銀行の表は、国別の開発統計として利用しやすい形で整理されています。Our World in Data の資料は、定義や加工方法、関連指標との関係を図表で確認しやすい点に特徴があります。

飢餓を理解するには、単一の数値を順位づけするだけでは不十分です。何が不足しているのか、誰を対象にした推計なのか、平均値なのか身体状態なのかを見分ける必要があります。食料と農業を考える出発点は、指標の数字そのものよりも、その数字が表している範囲と、表していない範囲を理解することにあります。

出典

https://data.worldbank.org/indicator/SN.ITK.DEFC.ZS

https://ourworldindata.org/grapher/prevalence-of-undernourishment

https://ourworldindata.org/grapher/prevalence-of-undernourishment-vs-daily-supply-of-calories

https://ourworldindata.org/grapher/prevalence-of-undernourishment-in-developing-countries-since-1970

https://ourworldindata.org/grapher/prevalence-of-undernourishment-vs-share-of-children-who-are-stunted